Column

第267話 錯覚と思い込み

いつもの朝が来る。

私はそのいつものローレーションをいつもながらにこなして出社する。そしていつものように駐車場の奥から2番目の定位置に車を止める。ず~っと、いつもの事だ。

数時間の仕事後昼食へと向かう導線の途中駐車場が目に入る。

んっ!

違和感が走った。よくよく眺めると、駐車場奥から2番目に止めていたと思っていた我が車が、奥から3番目に止まっているではないか。誰かが邪魔で移動したのか、そう思った私はそれはそれでしょうがないとそのまま昼食へと入った。

仕事も一段落して、爺とかした私は少しばかりはやめに仕事を上がらせてもらっている。その時間になった私は退社する前にJへと私の車を移動したのかを尋ねてみた。

「いやいや朝からあの位置に止まってましたよ。何かあってあそこに止めて後でいつもの位置に移動するのだとばかり思ってました」

思いがけない言葉が私の眉間を直撃した。そうか、私は朝からそのままそこに止めていたのか、そんな意識は全くなかった。何かそうする原因があったのか。私は少しばかり考えてみた。

そうかそう言えば対面駐車している隣の美容室の駐車場が今朝は混んでいたはずだ。そこでその混んでいる対面の駐車場の車の並びに変に感化されてしまって3番目に止めてしまったのかもしれない、そう思った私はその事をJへと伝えた。

それでなくてもそれほど広くもない駐車場だけに気を付けなければならいと自分に言い聞かせた。

「お疲れ様です」

そう挨拶をして私は裏口を開けて駐車場へと進路を向けた。

んっ!

私の頭の中には今朝方混みあっていた美容室の駐車場の絵が鮮明に浮かんでいたはずだった。3番目への駐車はそのせいに間違いないとの確信もあったはずだった。

先ほど何かのせいにした安堵感は、瞬時粉々に砕け散った。

美容室は本日定休日であった。

車などただの1台も止まってはいなかった。私の頭の中を駆け巡ったあの鮮明に込み合う絵柄はいったい何だったのだろう。認知の症?いやいや、まさかまさか、まだまだやらなければならないことは理解できているはずだ。

ただ、やはり老化からくる初期的なにかなのか?思い込みによる錯覚的自己有利な映像処理?それを意気揚々と話したJへのあの発言を思い返すと恥ずかしくなった。

いよいよ記憶と現実の紐づけに気を付けなければならない年頃になってしまったのかもしれないと、帰路中考えてしまった。

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