Column

第207話  バナナ効果

  何気なく付けたテレビ、画面ではサプリメントの通販番組が映し出されていた。
早朝のテレビ番組のほとんどが健康を意識したそれだ。そんなのやってないのはNHKくらいのものだ。膝が痛いだの目がぼやけるだの腰が痛いだの、年をとってきたら当たり前の現象をネタにあれこれとサプリメントを紹介している。毎回毎回同じものの紹介番組が続いているように思うが、やはり買う人がいるからこうも続くのだろう。
そんな私もそれなりの年齢だし、近頃体の切れが悪くなってきていることくらいはうすうす気付いてはいるとこだ。そしてやはりそんな健康的指摘は気になるものだ。
そろそろ自分も何か体にいいものを取り入れて行かなくてはならないだろうな、なんて思ってしまっていた。
そんなある日、スーパーで買い物をしていると、ひとりの女性(年のころ70才くらいか)が、山盛りに積まれている小分けにされたバナナ(4本程のやつ)をひと房手に取って、それを凝視し吟味しているのが目に入った。その女性は手に取ったそれが気に行ったのか、買い物カゴに入れるとさっと立ち去って行った。するとまたひとりまたひとりとある程度年を重ねた客が現れてはバナナを買っていく。バナナがこれ程売れているのは知らなかった。気にもしていなかっただけに驚いた現象だった。考えてみれば、どこのスーパーに行ってもエントランスには大量のバナナがセッティングされているような気がする。
そこで私はひらめいた、もしかしてバナナって健康維持にいいのかもしれない、と。
年寄りがこれほど買って行くからには、うまいだけではない何らかの理由があるのかもしれない。例えば体にいい成分がたっぷりとその個体に入っていて体内のバランスを保ってくれる作用があるとか。細胞が活性化するとか、うんぬん。
登山やスポーツの時以外、ほとんど普段は口にすることは無いバナナだったが、今回は皆を見習って買ってみる事にした。昔々は風邪を引いた時によく祖母が買ってきては食わせてもらった思い出がある。確かそんな昔は大きなひと房でしか売ってなかったが、今は3本4本で小分けにして売っているようだ。バナナは足が速いだけにそれは助かる。
それからはバナナを買いそして食す事が習慣になっていった。自然な物だし体にもきっといいだろうと、昼と夜1本づつ食すことにした。取り分けどこがいいとか全く自覚は無かったがとにかく何かにいいかもしれない、と摂取し続けていた。もう習慣と言ってもいいほどになっていた。
かれこれ半年がたったが、格段、何の効果も無いように思われた。
体が軽い訳でもないしジョギングが早くなった訳でもなく朝の目覚めが良くなった訳でもなかった。ただ、腹が緩くなっていたのには気が付いていた。以前は、時々は何かのきっかけで緩くなることもあったが時がたてば自然に治っていた。ただ今回は緩みっぱなしのような感じだ。何か悪いところでもあるのか、と心配になるが四六時中便意をもよおす訳ではないからそんな大事でもないか。ただほぼほぼ緩いのは確かだ。どうしたのだろう?
緩くなり始めたのは、確か2月あたりからか、うん、確かにそうだ。そのころ何か生活に変化はあっただろうか、考えてみる。
その時ふと思った、もしかしてバナナのせいか?そのあたりからバナナを食い始めたように思う。いや真相はわからない、それでもなんだかそんな気がしてきた。
それなら、ちょっと止めてみるか、よし、いったんバナナ摂取は止めて様子を見よう。
そんな秋も深まった10月の半ばの頃だった。
バナナ摂取を止めて5日目あたりか、何だかお腹のゆるみが緩んだような。ちょっとづつ改善されているような気がする。下っ腹がゴロゴロ言わなくなってきた。
やはりバナナか?「そんなバナナ」って、遠い昭和の使い古されてすでに忘れ去られた小さなギャグ。何だかホッとする言い回しだ。
私はそれ以来、バナナを普段食すことは止めた。どうやら私には体質的に合わないようだ。
まだはっきりとはしないが、バナナはやはりいざと言う時の食べ物と言う価値観でみる事にしよう。ここぞと言う時のとっておきの食物、そんなところか。

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