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第193話  不慮と向き合う

  例年よりも随分と長かった梅雨がようやく開けたと思いきや、連日30℃をいとも簡単に超えるほどの熱波が日本列島をいっきに飲み込んでしまった。御多分に漏れずにここ八戸でも連日の猛暑。東北人には心底こたえる暑さだ。
そんな、玉汗たらたらの気だるい午後のひと時、来店客の途切れた時間にいつものように洋服を畳んだりディスプレイを変えたりなどしていると、3FのSが下りてきて、今3Fで商品を見ているO君の具合が悪いと言う。この暑さの中熱中症ではないかと皆で思った。取り合えずエアコンの効きのいい1Fに下りてきて冷たい水を飲ませて椅子に座らせて休ませることにした。ただ、じっと様子を見ているとなんだか顔の表情がいつもと違う気がするが・・・。紙コップで冷えた水を飲むのだが唇の端からその水がたらりと膝に滴り落ちた。
O君、右腕がしびれて動かなくなってきたと言う、が、その言葉使いにもやや違和感が漂う。どうやら熱中症のくくりでは捉えられないような症状が現れてきているようだ。私たちの出来る範囲はここまでだろう、Jが119コールをした。
救急車は10分ほどで到着してくれた。それと同時にO君はむくりと立ち上がり右足を引きずるように玄関先へと歩み寄る。いくらかふらついているものの気丈に振る舞う。
救急車内からひとりの救急隊員が下りると足早にO君のところに駆け寄った。
「はい、両手を水平にこっちに上げてみて」
早々に救急隊員はO君に向かって言った。
O君はその指示に報いようと必死に両腕を上げようとするのだが、右腕が下方45度までしか上がらない。
「じゃあ次に、今日はいい天気だ、と3回言ってみて」
次に言葉の指示が飛ぶ。
「きょうは・・・・・????????」
無情にも、2回目からの言葉がうまくは出てこない。
さっきまではある程度まともな受け答えが出来ていただけにその病状の進行速度に驚く。
これは緊急状況と判断した救急隊員は傍らに用意したてあったストレッチャーにO君を横に寝かせて救急車へと搬入した。
この後、救急車に続く形でドクターカーが到着した。ふたりの若いドクターはその車から降りるとすぐに傍らに止めてある救急車へと向かい、そしてその車内へと足早に消えていった。ここで私達は、ひといきつくことが出来た。
結果は脳出血だった。
手当てが早かったせいもあり一命をとりとめることが出来たようだ。良かった。
O君は40代に突入したばかりの、言わばまだまだ若手と言っていい年ごろだ。数年前のHといい、中年期に入ったくらいでもこれ程重篤な病気が突然やって来る恐怖は計り知れない。いつどこでだれがなってもおかしくないことを実感させられた。
しっかりと気を付けて生活しなければならないし、もしもの時はどうすることがベストなのかの行動を事前に考えておかなくてはならない、そう思った。
Hは今ではすっかりと完治し以前と変わらない、いや、以前にも増して元気になっているような気がする。いいことだ。
そしてO君は、どうやらそろそろICUを出てリハビリ治療へと進んでいるらしい。家族のためにも完全な社会復帰が出来るよう頑張ってもらいたいものだ。

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