Column

第153話  雨男たる

  私は、おそらく生粋の雨男である。
ショートツーリングに出掛ければゲリラ豪雨に遭遇するし、数年前のロングツーリングに至っては巨大台風と共に6時間ほど並走してしまい、とうとう単車が悲鳴を上げて北関東でリタイヤしてしまっていた。
登山に出掛けても頂上付近で急に雨雲が出現してシトシト雨模様になる始末。そんなんだから出張などで遠方に出かけるときなども必ず傘は持参していくようにしている。
そして思うに、雨男としての不利益は決して雨だけにはとどまらないということである。

最近始めたプール通い。
時間帯にもよるのだろうが、私の行ける時間での市民プールはいささか混んでいてひとつのレーンに2から3人が泳ぐといった事態もたびたびで、譲り合いながらのトレーニングとなってしまう。
そこで時には、こことは違う町のプールにでも行ってみようと思い立ったのである。
ネットで検索してみると近場では三沢市と七戸町にそれはあった。
どちらか、といえば三沢が近いのでそちらに行ってみようとなったのである。休館日を見ると月曜日がそうだ。本日は火曜日、いける。しかも午前9時からやっている、これなら時間を有効に使える。八戸の温水プールは午後の1時からのオープンだから、それを考えればかなり良心的である。
早々に出発。
産業道路から、めったに通ることのない海岸線を並走するローカル線へと入りそれを北へと進む。お世辞にも広いとは言えない道路幅だが、そこを行きかう車の多いこと。なかなかの交通量である。八戸を出発して小一時間、迷いながらもなんとかその場所へと到着できた。
後部座席に置いてあるスイムセットとバスタオルを手にその玄関先へと歩いて進む。
すると、その私の一連の行動を観察でもしていたかのようなタイミングで、玄関の扉が開いた。何事かと、私は少しばかりの躊躇のなか立ち止まった。
その玄関から出てきた、年のころ30あまりの如何にも誠実そうな青年は立ち止まっていた私に向かって軽い会釈をして、そして口を開いた。
「申し訳ありません、現在改修工事をしておりまして、休館中なんですよ。4月1日にはオープン予定となっておりますのでどうぞよろしくお願いします」
「えっ」
私、絶句、そんなことはホームページに一言も書いてはいなかったはず、いや、見逃したか?
「あら、そうなんですね、それは残念、じゃあまた来ます」
そう告げ、泣く泣くの退散。
ならば、である。
確か温水プールは七戸町にもあったはず、私は乗り込んだ車のハンドルをきりりと握り、次の目的地である七戸町へと進路をとったのである。
場所として、大体の目処はたっていた。
道の駅手前の旧4号線沿いを山側に少し入ったあたり、そこには武道館などスポーツ施設が建ち並ぶエリアがあったはず、きっとそのあたりにそれはあるに違いない。
そしてまたまた小一時間ほどかけて車は七戸町へと入りそのエリアへと到着。
探すべく、そのエリアを一周するも目的の建物は発見できず、私はたまたま通りすがる女性に声を掛けて聞いてみた。
「ああっそれはここじゃないですよ、天間林ですよ、天間地区の役所のそばにあるんですよ。」
思わぬ仕打ちに再び絶句。
女性にお礼を言って私は再びハンドルをきりりと握る。
時計を見るとそろそろお昼時、道の駅もすぐそこだ、私は先にランチをとることにした。
ここ七戸町の道の駅のレストランはどれを食してもなかなかのうまさがある。北方面へ出向いた時はほぼここで食事をとる習慣になっていたからちょうどよい。
生姜焼き定食を注文、店内そこそこ満席の状態でざわざわと賑わっている。
ここで腹を満たして天間にあるというプールに行ってひと泳ぎして八戸に帰ればちょうどいい時間だろう、ここまで足を延ばしても空いているプールがあるのならどうってことはない。
野菜の切れ端ひとつ残さずきれいに定食をたいらげ、車に戻る。
どれどれ、車で30分足らずの近場であるが、ネットで正確な場所だけは把握しておこう。私は傍らの携帯電話を手に取り、その温水プールの情報を取り出してみた。
ふむふむ、このあたりか、ここを右に入ってすぐだね、よし分かった・・・・。
「んっなんだこれは」
その地図のある画面の上のほうにもう一つ重要な情報が載っていた。

火曜日定休。

今日はもちろん火曜日、ふっふっ、笑いがこみ上げる。
やはりこう来たか、なかなか面白い、常人ではこうはいかないだろう、ふっふっふ。
結局、私はそのまま八戸に戻り、いつものプールへと赴いた。
ちょうどいつも行く時間に到着し、いつものように着替えていつものように泳いだ。幸いなことに今日はすいている。今日はラッキーじゃないか。
ふっふっふ、なんか面白い。

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