Column

第223話  アイム・ショック

  「ちょっと、背ちっちゃくなった?」
久しぶりの旧友集合、家の中でその食事の準備をしながら何か違和感を察知したのかHが私に向かってそう言った。
そうなのだ、ここ数年で私の身長は明らかに縮んでいるのだ。
年に一度の検診で、一年で数ミリ程度の縮みを数字的に認識はしていたもののそれ程大きな事とは感じることも無く生活してきていたのだが、ここ還暦を超えてからの縮みは大きく年5ミリとか、昨年はなんと10ミリ縮んでいて、昨年と比較してくれていた看護師さんにちょっと大きい数字ですねなんて言われて、それからはやはり気になってしまっていた。
それでなくても170cmにぎりとどかなかった私の身長では、トータルで数センチの縮みは致命的なダメージなのである。
ここ数年で積み重なった縮みは3cm程か、これから先の事を考えるとなかなかでかい数字である。私はネットでそれらに関する情報を眺めてみた。やはりある。どうやら私の年齢くらいでは3cm前後の縮みはあたりまえにあるらしい。
ただこれから、この先どんどん縮んでいったらと思うとぞっとする。どうしよう。
「走り過ぎなんじゃないの?」
すでにテーブル脇に座りテーブル上のセッティングを担っていた旧友のMがそう言った。
そうかな、そう言う事もあるのかな、なんて思う。 
取りあえずその場ではそんな話もすぐに途絶えてビールで乾杯、愉快な夜を過ごした。
それから数日、Mの言った「走り過ぎなんじゃないの?」が気になっていた。
この年齢で毎日毎日10キロも走っていれば、それはそれで体には相当な負担がかかっているはずだ。走るという事は、膝だったり腰だったり背骨だったりに、ひと足ごとにずんずんと負荷がかかっているだろうから、それぞれに備わっている軟骨に圧迫を与えている格好になっているのかもしれない。そうなれば長い年月、少しづつその軟骨が潰れてくる可能性だってある、そうなれば全体的に身長が縮んできてもおかしくはない。
そう思った私は、季節柄厳寒の冬でもあるし走る事を減らしてみようと考えた。
近々のマラソン大会だって5月だからまだ先の話だ、今は週2~3くらいで様子を見てみよう。この年齢で身長がぐんと伸びることなど無いにしても、この縮んでいくと言う退化が止まってくれればめっけもんだ。
後は水分だ、人間を形成する成分の大半は水分で出来ていると言う事だから、水分が枯れてはやはりいいことは無い、しっかりと水分補給に気を付けてみよう。プラスでカルシウムサプリも試してみようか、何がベストか少し調べてみなくてはいけない。
考えてみればここ5~6年でじわじわと縮んできている事は自覚していたが、いやいやそれ程でもないだろうなんて目をつぶって流してきた苦い経緯がある。
このままではいけない、なんとかここで踏ん張って健全な体を維持し、快適な老後を目指さなければならない。遅ればせながらここから臨床実験、してみよう。

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