Column

第197話  2020

  人生山あり谷あり、今年ほどそれを切実に実感できた年はそうはないだろう。
今年2月、中国武漢でそれより数カ月前に発生したと言われる新型コロナウイルス、それが海を越えて欧米で猛威をふるいだしているあたり。その頃日本では未だ対岸の火事と言った状態で、海外は大変そうだね、くらいの安易な考えでまだまだ落ち着いていたものだった。
その後横浜に停泊中の大型客船内でクラスター騒ぎが勃発してからはさぁ大変、続々と日本国内でも新型コロナウイルスの感染が広がりを見せてきた。
ロックダウンとまではいかなかったが、政府の危機管理政策もあり人々はその未知のウイルス感染の恐怖から家に閉じこもるようになってしまった。そうなれば社会活動は完全に連鎖停滞してしまう。何から何までが今までのやり方では通用しなくなる。文明の当たり前なんてとるに足らないものとなった。先の格言から言えば、まさに社会全体がコロナ禍の谷に真っ逆さまに落ちていくのである。
4月は特にひどいものだった。かつて経験した東日本大震災当時を彷彿させるほどの恐怖に包まれた。私はその先の見えない不安感から、わき目も降らず一目散に銀行に走ったのである。
ただ、身動きのままならないこの状態の中で、それならどうするか、となる。あれほど頻繁にあちらこちらの展示会を駆けまわっていたものだったが、今年は各社資料を送付してもらっての発注で済んだ。十分とまではいかないまでもそれなりに事が足りた。
パソコン1台あれば事足りる会社などは自宅でのリモート出社で十分だと気が付いた。大きな気付きと言っていいだろう。結局どこに住んでいても社員としてやっていけるのだから。そのうち都心の大きなビル群はもはや必要なくなりもぬけの殻になりかねない。
新型コロナモンスターの出現で文明は大きな曲がり角を迎えたのである。
この12月、コロナはとうとう第3派となって世界を席巻し、ここ日本でも当然のように感染者を増幅させている。どうなるのか未だ一向に先が見えてはこない。
イギリスでは早々に月中ワクチンの接種が始まっている。うまくいってくれればいいのだが。日本でも来春までには何とかワクチン接種が始まるかもしれないとの噂はあるが、それも話半分だ。副作用次第と言っていいだろう。
今年4月からこの12月にかけての9ケ月、私は、いったいどうやってやり過ごして来たのか良く覚えてはいない。なぜなら通常とは全くと言っていいほど世の中の流れが違いすぎて無我夢中で進まざるおえなかったのだから、まるで33年前の店の創業当時の右も左も理解できていなかった頃の心境と似たものがある。
そんな波乱な年も残り数日、感染防止に気を配りしっかり皆と一緒に乗り越えなくてはならない。大袈裟ではなく、人類一丸となって。
延期となってしまっていた形だが、来年は、日本人としては待望の母国開催オリンピックイヤーとなる。果たして準備万端開催できるのだろうか、少なからず心配は残るが、希望の持てる年となってもらいたいものだ。

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