Column

第238話 そろそろ考える

今年2024年8月を迎えて65歳、年金をもらう年になる。

昨年にはすでにその年金を受け取るべく手続きはしてあるので、しっかりと受け取ることになる。もちろんそれほど多い金額ではない。店を始めた頃などはたいした売り上げもなく、年金の支払いを免除してもらうような手続きなども数回したものだから、中途半端からの支払いとなっている。それだからもらえる金額は雀の涙ほどだが、それでも貴重なものだ。

途中、会社として国保から社会保険へと移行してあるので、そこからは強制天引きである。未だに現役で仕事をしているのでそれへの支払いはもちろん続くが、それはそれだ。

今考えているのは、きわめて個人的な考え方ではあるが、人生80年と言う事だ。

私の今の年齢から換算すると、私に残された時間はあと15年と言う事になる。15年、改めて思うとなんだか先が見渡せるような短さではないか。それだから、やり残したことがあるようならトライしてみたいと考えている。

そこでまず思い浮かぶのは、小説を書いてみたいと言う事だ。もちろん面白いやつがいい。はたち前後の青二才であった私が青春を過ごした、70年代の新宿を舞台にした時代物が脳裏をよぎる。日本が高度成長へと突き進むべく熱く楽しくとてもデンジャラスな時代であった。当時学生でありながら、私は三光町のキャバレーでバイトをしており、奇々怪々で波乱万丈な夜の街にどっぷりと浸かっていた時代。そのボーイのバイトが終われば西新宿のター坊(友人)のBARで日々朝まで飲んだ。ター坊は当時30代、若い頃はスクールメイツで芸能活動をしていたみたいで、歌は抜群にうまかった。彼は朝方の〆にいつもカフェオレをいれてくれたものだ。当時の不夜城歌舞伎町は大いに荒れていて、青龍刀を振り回して走りまわっている輩を目にしたこともあった。三光町から明治通り沿いの2丁目付近はすでにお姉の聖地で、その脇道には未だ赤線なども存在した。私の愛車スバルR2はここ2丁目コンビニ裏の空き地にいつも駐車させてもらっていたものだ、そっと無断でさりげなく。

私のバイト先であった「テアトル」ビルの4階には「椿ハウス」と言う伝説的クラブがあった。「ロンドンナイト」と銘打ったドレスコード付きのパーティーが時折開催されていた。客は文化服装学院のデザイナー志望の学生達がそれぞれ自身のデザインした個性的で奇抜な洋服で訪れていた。それに芸能人など文化人の出入りが多かった。

キャバレーには私と同期のバイトがいた。彼は長野県出身で日大に通う学生だった。彼はその店のホステスに恋に落ちた。ホステスは「あかね」と言った。もちろん源氏名である。あかねは当時、30はとうに過ぎていたはずだ。彼は20歳、10歳以上の年の差、私はもう少し考えろと言ったが彼は聞く耳を持たなかった。熱い時はそんなものだ。確かにあかねはいい女だった、惚れるのも重々わかる。その後彼らは結婚し、この店をやめて旅立った。数々の出来事が瞬時にそしてセピアながら鮮明に過る。どれもが新鮮で楽しく切なくそして思いで深かい。数々の出会いが巡り、そして数々の別れが巡る。

そんなちっぽけな世界観を切り取って1冊の本を書いてみたいものだ。自己満足な提案。

まずは物語の骨格である設計図から書き始めなければならない。当然枝葉を付けたフィクションになる、魔法だって使えそうだ。そんな目標が出来るとなんだかワクワクとしてくる。計り知れないその時間を有意義に暮らせそうな気になる。

短いようでなんだか長くて、長いようでなんだか短いような曖昧。

「目標年齢まであと15年か」

そう考えると、しみじみとしてくる。

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