以前から気にはなっていた特徴的な形を持つ個性豊かなアガベ達。
だが、手に入れてすでに20年は経過している「ハゼノキ」や、その他大小オリーブなど数点の植物を育てている私にとっては、これ以上の植物の育成は難しいだろうと考えていたため、気になってはいた「アガベ」ではあったが手を出すべきではない、と考えていた。
その時までは・・・。
夜超山森林公園でリュウゼツラン(エスピーナンバーワン)が開花したとのニュースを以前SNSで目にし、滅多に見られるものではないその花を見学に行った事があった。この種類、確か日本では初の開花との情報もあったような気がする。50年~100年に一度だけしか咲かないと言われる貴重なその開花時の姿を、その開花間隔よりも確実に生先短いであろう私自身が、生きているうちぜひとも一目見てみたかった。
そのリュウゼツランは施設の天井にまで届きそうなほどに茎は伸び(8m程)、その先には細長い1m程の円錐形の黄色い小さな花の集合体がやや緩やかにこうべを垂れた状態で佇んでいた。まるで奇妙な黄色いフラミンゴの首の様にも見えた。大きな感動と言うものは別段なかったが、目にしたと言う満足感は十二分に得られた。
その他、この温室にはかつて私の見たこともないような不思議な植物がわんさかとまた生き生きとして地面に生えていた。鉢植えではない本物の力強さだ。草木とはまた一味も二味も違った熱帯の感覚だ。メキシコの熱風を感じる風景と言っていい。
その、一生に一度のリュウゼツランの開花をしっかりと目に焼き付けた私は、この施設の奥にあるアガべの販売所へと足を伸ばしてみた。そこには小さな鉢に小分けされた、言わば子アガベ達が所狭しと並んでいた。実にかわいいものだと思った。しかし、買う訳にはいかない。これ以上の管理は無理だ。私は心を鬼にしてこの場を立ち去ったのである。
あれから約1年半が経過したある日、私は招待を受けていたある展示会へと足を運んでいた。それはハンドメイドの家具雑貨の展示会だった。その展示会場の一画に「アガベ」の商品展示が併設してあることに気が付いた。一通り家具等の展示に目を通した後に、それが気になっていた私は、その「アガベ」コーナーへと寄ってみた。なかなか健全そうないい個体が揃っているように見えた。夜越山とまでは言わないがなかなかの品ぞろえであった。
そして、ここで出会ってしまったのである。
鉢入りで背丈が30cm程の立派なリュウゼツラン。
頑なに、手に入れることは諦めようと決めていたにも関わらず、私はそのひと鉢をさりげなく我が家へと招待してしまったのである。
ただ、「アガベ」系を育てるためには、育成ライト(光合成促進)や育成ファン(風が余計な熱や蒸れを排除)など、育成グッツが必要だと言う。私はそんなノウハウを伝授してもらい早速買いそろえたのであった。
それから4カ月、鉢は7個にまで増えている。どうしよう、これはまずい。育成ライトも育成ファンだって2個づつになってしまった。どこで止めるかが問題だ。必要に迫られ育成ラ
イト用アイアンラックまで買ってしまった。やばい。
あとひとつ、あとひとつで8個になる。切りのいいところでここまでとしよう。それがいい。そう心に決めている今日この頃なのである。
最低でも50年は経過しないと見られない開花、うまく育てばどうやら120歳くらいでそれを見ることが出来るかもしれない、が、一度見ているのでそれ程また見たいとも思ってはいない。それに、鉢植えでは無理がある。
小さな奴に手をかけ地道に育てるところがいいのだろう。