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第240話 登山は休止中

2024年に入って日本中でクマ出没のニュースが駆け回る。最近のニュースでは北海道の山林道路を走行中の軽トラの前方に子連れのヒグマが出現し、子熊は一目散に逃走して近くの木に登り、大きな母熊はその軽トラに向かって突撃して来ると言う恐怖の映像だった。驚いた軽トラのドライバーは前方には進めずに慌てて停車してしまう。低く構えた母熊はそれに向かって鋭い牙を震わせこちらに突進してくると右手でフロントガラスを一撃、ガラスには大きなヒビが入る。その一撃の後に母熊がサイドに回ったのだが、その一瞬のすきを見て軽トラは再度スタートを切る、瞬時の判断が功を奏し何とかその場から逃げ去ることが出来ていた。なんと恐ろしい光景。もしも車に乗っていなかったらと想像するだけでぞっとする。登山中なら間違いなく死あるのみ、と言ったところだ。

近くでは八甲田山での事故もあった。山菜取りに山に入った老夫婦が襲われたのだ。残念ながらこちらの事故では妻が襲われ命を失くしてしまったのだ。この事故を切っ掛けに八甲田山への入山は禁止と言う事になった。これだけクマ出没ニュースが流れていてこれだけ凄惨な事故が起きれば当然のことだろう。

ただ、人間の入山を止めてしまうのはますます熊の行動範囲を広げることにつながる。今までそうそう現れなかった人間の歩いていた山道にも姿を現すようになるだろう、そうなればその先なかなか入山規制を解く機会を探るのは難しくなるに違いない。

八甲田山に隣接する田代平高原は、かつては豊かな大自然を満喫できる風光明媚なキャンプ地であったのだが、数十年前に熊が出没したと言う事で一時的にチャンプを規制した。しかし、それからはそこでキャンプが解放されることは残念ながら無かった。人が排除された平原には、ますます熊が出やすくなったことが原因だ。

美しい草原だった場所は、今では背の高い草木におわれてしまっていて、水飲み場や調理場だった施設もその草木のなかにすっかりと飲み込まれてしまっている始末だ。その地の解放の見込みは見えないし、この先もないだろうと感じる。

私は、今年は2月と3月に八甲田を登っている。まだ雪のある季節だ。

この時期はクマも冬眠中で事なきを得てはいたが、これからの登山はそんな冬期登山が中心になってくるのかもしれない。

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