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第82話  散策を楽しむ

 
   

  軽やかな緑の風が街路樹を撫でつけるたびに木漏れ日がさわさわと揺らめく。
1990年代のとある日曜日の昼下がり、三日町を含むメインストリートはいつもの賑わいの中にあった。
三車線一方通行の大通りにはバスやらタクシーやらの商業車を押し退け、多数の乗用車が右往左往と入り乱れていた。駐車場はどこも満員御礼でどこか空いている場所を確保するのがひと苦労、そのため我先にと信号待ちのドライバー達は必死の形相でハンドルを握りしめてはあたりを探る。
赤レンガの歩道にはおじいちゃんおばあちゃんを伴った家族連れが、デパートのレストランへでも向かうのか、中でも一番小さな女の子は洒落たお子様ランチが目当てかもしれない。恋人達は顔を見合わせ一言二言語り合いながらファッションビルの内へと吸い込まれて行った。夕食時にはパーティーでもあるのか、たった今買い込んだばかりの、食材がぎっしりと詰め込こまれた大きなビニール袋を両手いっぱいに抱えたおばちゃんが、大勢の待ち客に混じってじっとバスを待っている。汗しながら、自身の持ち分をせっせと減らしているティッシュ配りスタッフの叫ぶ声が遠くまで響いている。歩き進むにつれ、すぐにも想像がつく料理のにおいがあちらこちらから漂ってくる。
思えば平日などは午後三時をすぎると学校帰りの学生達で溢れかえり、夕闇迫る頃には街全体にネオンが輝き始め、しっとりとした大人の街へと変貌した。ひと昔前のごく普通の情景。
そんな喧騒が華やかだった街からは程遠い趣に変わってしまったのは果していつの頃からだったろう。ひとり減り、ふたり減り、小さな減りが長い年月で大きく減った。街が変わったのではなく、取り巻く世間が変わってしまったのだ。時代の流れと言うのか、進化の過程と言うのか、はたまた分散化と言うのかよくわからないが、潮流から大きく外れた感は否めない。
ただ、それから外れたからといって直ぐにどうなるものでもない。街には、その街特有の歴史と文化と人間が根付き蠢いているものだ。伝統の祭があり、行き付けのうまい飯屋がある。強烈な個性を持った多彩な店々があり、豊かに風香る公園がある。日の当たる大通りが貫き、横道にくるりと足を運ぶと新たな発見がある、と同時にちょっとしたスリルとサスペンスが渦巻いている。
そう、街には日々移ろう現実と味わい、そして臭いがあるのだ。花咲いた過去の時代の賑わいはともかく、漠然とではあるが脈々と受け継がれていくであろう個々の力を感じる。全く新しい個性を持つエリアが数多く増えた事は、単に楽しみが数多く増えたと言う事だ。それらをも含めたこの大きなフィールドが私達の遊び場なのだ。爽やかな初夏の風がほほを伝う心地よい季節となった。時には街という変化に富んだ異空間をちょいと散策してみるのもきっと楽しいはずだ。

「デーリー東北新聞連載・第3話」

 
   
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