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  第8話  いちもつを握りしめて  
   
私には、以前古着屋さんに勤めていたNと言う幼い頃からの友人がいた。
現在ではその古着屋さんは残念ながら既になくなってしまっている。
当時、Nとは会わない日はないと言う程に、毎日の様に顔を合わせていたものであった。 お互いの店などもよく行き来しており、ある日などはNが私の店に遊びに来ていて何か不 信な行動をとりながらも楽しく歓談した後、『それじゃ、またなーっ』と言い残しそそく さと帰った事があった。
その後である。次から次へと、ちょうど1分置きに店の商品である目覚まし時計が、あち こちで鳴りだしたのだ。
びっくりした私は、焦りながらもひとつひとつの目覚まし時計のスイッチをオフにしなけ ればならなかったのだった。
こんな悪戯などもお互い日常茶飯事であった。
そんなある夏の夜の事である。

私は店の仕事を終えた後、Nのアパートへと遊びに出掛けた。
他愛のないいつものくだらない会話の中、Nが突然、
『今から八甲田に行ってみたい。』と言い出したのである。
すでに時間は深夜の1時を回っているのだ。深夜の八甲田と言えば、数々の逸話を残す、 誰もが認める県内最大級の心霊スポットである。
私はあまりその心霊事情は得意ではないのだが、その日はなぜかチャレンジャーと化して しまったのである。

「よし行こう!」

そうと決まれば、私とNは食料のカップラーメンと、湧かしたばかりのお湯の入ったポッ トを抱え、いざ車に乗り込んだのだった。
小一時間程走行し焼山を越えた頃には、既に一面霧に包まれてしまっていた。もちろん他 の走行車両などはただの一台も見当たらず、さらに進むに連れて、辺りは漆黒の闇に覆わ れ、山岳道路特有の曲がりくねった道が徐々に姿をみせ始めていた。
闇夜の、しかもこの霧の中、私は慎重にハンドルを回し続けた。
道の両側には大木が立ち並び、ザワザワという音と共に私達へと迫ってきそうな勢いだ。
やはり 思った以上に居心地の良い場所ではない。
そこで私は、一刻でも早くこの場所を抜けてしまいたいという衝動に駆られてしまってい たのだった。

どれくらい走ったろうか、前方にかすかな黄色い光が木々の隙間からチラチラと見えて来 たではないか。
この道をこのまま道なりに走っていれば、その光の地点へと着きそうだ。
その光は、ちょうどトンネルの出入り口の所に備え付けてあった外灯で、この辺りではた ったひとつの電燈のある場所であった。
薄暗かったが、しばらく走って来ての久々の電燈であったので、私はその場所へ一時車を 止めてみることにした。
だが一旦停車してみると、その薄暗い電燈がたった一つだけある事の方が、かえって恐怖 心をあおりそうな所だったりするのだ。
するとNは、

「ちょっとオシッコして来ていいか?」

と言い、 落ち着いた様子で車から降り路肩で用を足し始めた。
この奇妙な場所で、Nは普段と変わらずなんともない様子だったので、私はいたずらに少 し車を走らせてみようと思いたったのだ。
そしておもいっきりアクセルを踏み込み、20メートル程前方へと車を進ませた辺りで、 私はちらりと後方を覗いてみた。

するとどうだ!
Nは左手にオシッコが出っぱなしのいちもつをギュッと握りしめ
右手は思いっきり5本の指を開ききり、その手を私の方へ「待て~」と向けたまま、あの 薄暗い黄色い光を斜め上から顔面に浴びて、物凄い形相へと変化していた。
まるで鬼である。

しかもこの車と同じ位の猛スピードのカニ走りでこちらに迫って来るではないか。
その凄まじい光景を見てしまった私は、今までに感じた事もない程の、言いしれぬ恐怖に 身震いしてしまい、自然と右足がアクセルをさらにグッグッと踏み込んでしまっていた のであった。

三日程、口は聞いてもらえなかった。

 
   
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