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HOME > COLUMN > 第74話...愛しいダイへ |
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第74話 愛しいダイへ |
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突然と私の手を振り払い、一目散に何処かへ走り去ったあなたのかわいい後ろ姿を今でも 忘れる事が出来ません。自宅前の公園、先客は誰もいない事を良い事に、私はあなたと私 を結ぶ皮製のリードをはずしたのです。それはあなたをこの公園という限られた空間の中 で少しでも自由に走らせ、喜ばせてやろうと考えたからです。 しかしそれは大きな間違いでした。生後5ヵ月、まだまだ幼く世の中の仕組みなど完全に 把握仕切れていないあなたは、これをチャンスとばかりに私の目の前から忽然とその姿を 消したのです。あなたの名前をいくら叫び続けても、あなたは一度としてこちらを振り返 る事無く、わずかに空いたフェンスの隙間から車行き交う公道へと飛び出して行ったので す。 正直私はあせりました。フェンスの外と言う魑魅魍魎渦巻く過酷な世界へ、幼く右も左も 解らないあなたがたったひとりで飛び出して行ってしまったのですから。私もすぐにその 後を追いました。しかしすでにその姿は何処にも見当たりませんでした。私は懸命にあな たの名を呼び、あたりを駆け回り探し続けたのです。それでもあなたは何処にもいません でした。そこで私は一旦自宅へと戻り、自転車を持ち出したのです。自転車に跨がった私 は、さらに遠い世界へとあなたを探す為に足を踏み出したのです。私は懸命にペダルを蹴 りあなたの名前を呼び、そしてあたりに目を凝らしました。 あなたが事故にあってはいないか、道に迷って困り果ててはいないか、もしかして知らな い誰かにさらわれてはいないか、不安で胸が苦しくなりました。背中に浮いた汗がたらた らと伝って下に落ちて行くのが解る程です。その不安の中のひとつに、あなたがもしこの まま見つからなかったら、あなたの事を大好きな家族のみんなに、この現実をどう伝えた ら良いのかと言う問題もありました。どちらにしても私の体にはとてつもない負の重力が のしかかり、それに押しつぶされそうになっていたのです。一時間も探し回ったでしょう か、結局あなたはどこにも見当たりませんでした。家族の落胆する姿を抱えながら私はト ロトロと自宅へと戻りました。そうです、あなたを探す事を諦めたのです。冷たい人間だ と思いますか?しかし私は誠心誠意あなたを探したつもりでいます。自宅へ戻ると家族は まだ誰も帰ってはいませんでした。そこで私はこの非常事態を家族へなんて伝えればよい のか考える為に再び公園へと歩いていったのです。芝生の上へと座るとまずあなたの事が 過りました。車の事故にあってしまったあなたの無惨な姿がどうしても頭の中に浮かんで しまいます。振払っても振払ってもそれは決して消えませんでした。 そんな時です。 ガサッガサッと芝を蹴りあげる軽快な音が私の耳元にとどきました。そうです。それはあ なたでした。あなたは満面の笑みを浮かべ、口元からはベロを覗かせ、ハッハッと弾んだ 息で私目掛けて走って来たのです。まるで私に衝突でもするかの勢いで抱き着いてきまし た。私も思いっきりの力で抱きしめました。私は嬉しくて嬉しくてキリスト教徒では無か ったのですが、この時ばかりは神に感謝をしたものです。あなたは奇跡的に世間に転がる 邪悪な悪魔達を避けて自由を謳歌し、そして自身の力でここへと戻って来たのです。私の 心配などよそに、あの時のあなたは実に楽しそうでした。果敢な冒険を楽しんだ1時間だ ったのでしょう。この時、私の寿命は確実に10年短くなったと思います。
すくすくと育ったあなたは、家族をかえりみない愚か者の私の変わりにその家族の中心と
今年の夏は本当に暑い日々が続きました。
19日朝、私があなたに会いに行った時には駿はすでに仙台へと向かった後でした。ママ
午後2時50分、ママから電話をもらいました。
その夜、あなたの為にたくさんの人達が尋ねて来てくれました。里ちゃんにまきちゃん、
なるべくあなたがいない世界でも毎日をいつも通りに生きようと私は決めていました。翌
斎場は郊外の畑などが点在するのどかな場所にありました。
1時間であなたは白くきれいな骨となり私達の前に姿を表しました。
順番からいっても、そちらであなたに最初に会えるのはやはり私でしょう。その時は、あ それではひとまず・・・さようなら、ダイ。 16年間・・・ありがとう。 そして、みんなは元気です。
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