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HOME > COLUMN > 第52話...帰り際の美学 |
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第52話 帰り際の美学 |
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酒の席、特に会社関係の宴会などでは、年下の人間や新人などはなかなか途中からその席 を抜け出す事は困難である。ちょっとでも席を外そうものなら上司から「なにやってんだ ー!」と怒号が直撃する事は間違いないだろう。 最近では携帯電話の普及にともない、携帯電話を耳にあて「もしもし?もしもし?」と、 さも電波の具合が悪いかのように装い、そのまま外へと向かい怪しまれずに退散出来るの だが・・・・後が恐いけど。
かつて私が経験したエスケープ事件でひときわ異才を放つものがあった。
そんなゆるやかな時代の風が吹いていた、とある深い夜。
この日のKは、来店時からなんだか浮かぬ顔色でやや元気が無い様子だった。
このK、いくら酒を飲んだとしても、高慢ちきなアルコール検知器をなんなく弾き飛ばす
偉大な力を備えていた。どうやら厄介なアルコールを気化せず体内に液状で溜め込む特殊
機能を持った体質らしい。若気の至りではあるが一度だけ、真直ぐ歩く事もままならない
酩酊状態のままに検問を受けた事があった。酒の臭いはぷんぷん見るからに酒に酔っては
いるのだが複数回検査してみても一向に検査機のアルコール濃度は上がらない。全くなに
も出ないのだ。これでは警察としても検挙出来ないのである。止むなく警官もこれだけは
口にした。「少し休んでから帰れよ!」
ひと悶着から小一時間が経過していた。
そんな時・・・・・ぽっかりとコーヒーの事が浮かんだ。 「うわぁ〜っっっっ!」 奴の魂胆の全貌が私の頭の中で瞬時に組み上がった。 「あいつ帰りやがった!」
すっかりKの事は忘れ去ってしまっていた。丁度祭話で盛り上がっていた時だったという
事もあるが、それ以前に皆からわざわざお金まで集めている健気な仕草には信憑性があっ
た。疑う余地など微塵も存在しなかった。
この一件で素に戻ってしまった私は、今夜も多量の只酒を皆に飲ませてしまった事実にあ
らめて気付かされ、今更ながら反省の念が過った。こんなんでやって行けるのかこの店?
とひとり切なくなっていた。 「ふーっ」ながいため息がひとつ出た。そろそろ帰るとするか。 身支度を整えた私は、一日で最も美しい空間へと歩み出た。
(祝・ソロモン流出演!)
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