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HOME > COLUMN > 第47話...Jは凄腕エンジニア |
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第47話 Jは凄腕エンジニア |
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顔面に負った複数の裂傷から多量の血液を滴らせ、突然Jは舞い戻った。 「どうしたんだ、お前!顔中血だらけだぞ!」 「まじで?やっぱ顔もいってんのかよ。それより背中が超痛て~よ」 その裂傷は全身に及んでいるのだろう。目を凝らすとTシャツからジーンズまで至る所ボ ロボロに破れ、そこからも鮮血が滲んでいた。 「それにしてもお前すごいキズだなあ~いったい何があったんだ。それに、あのバイクは どうした?」 「ん~それがさ、あの時・・・・・」
高校2年の頃だった。ポコポコと走るYAMAHAミニトレ50が私の相棒だった。そん
な、なんとなく全てがのどかな時代、幼馴染みのJが何処からかスクラップで朽ち果てる
寸前のSUZUKI380(サンパチ)を拾って来た。どう見ても粗大ゴミである。車体
全体が歪にひしゃげたうえ茶色にサビ付き、そのサビが幾層にも浮いてしまっている。車
体の中央部分にエンジンらしき物は付いているのだが、おそらくボルトが数本抜け落ちて
いるのだろう、グラグラと揺動いていて辛うじて原形がわかるという始末だ。ガスタンク
はといえば、まるで空気の抜けたラグビーボールであった。
そう、その日はJが決めた初試乗会の日であった。
「どうだ、すごいだろ。遂に完成したぞ!」 キキキキーバァウンーボボボボボー!
SUZUKI380は敢然と息を吹き返した。 バタバタバタバタバター!
目覚めたマシーンは重低音で、あたりに重振動をまき散らしながら細い路地の中心を駆け
て行った。その走りは真新しいバイクとなんの遜色もなかった。 そうか・・・ナンバープレートがないんだ。 Jはバイク製作に夢中ですっかりナンバープレートの事は頭に無かったようだ。もちろん 役所に申請したところで「はいどうぞ!」と言ってくれる訳はないだろうから、どうせな らプレートまでもなんかカッコイイやつを作れば良かったのだ。そういったわずかなポカ がJの惜しい点だ。
私とNはJが帰って来るのをじっと待っていた。 時刻は夕方の5時を少し回ったあたりだった、帰る途中小腹のすいた私達は「きよし食堂 」に立ち寄った。この店は古くからの一杯飲み屋的要素を含んだ食堂で、金の乏しい人々 の憩いの場でもあった。私達はいつもの「定食」を注文した。そう、何々定食ではない、 ただの「定食」なのだ。しかも値段は200円なのである。品数は3品。具はたまねぎと にんじんにたまごを溶き入れた大振りの味噌汁、それにご飯と二切れのたくあんである。 その味噌汁に唐辛子を多量にぶっ込み食うのである。これがまた絶品なのだ。
夏の夕暮れはまだ先にある。きよし食堂を出たのは6時頃であったが、依然太陽は強い光
で町中を照らし続けていた。「定食」で満腹になった私達はその足で部屋に戻り、おのお
のバイク雑誌を見ながらくつろいでいた。
Jは家を出て、ひとつめの交差点を右折した所で未知との遭遇、はやくもパトカーと出く
わしてしまったのだ。心の準備もないままびっくり仰天、手元のおぼつかないJの慌て振
りを警官達は見逃す訳は無かった。すれ違いざまにバイクを凝視された時、あのナンバー
が無い事を直ぐに気付かれたのかもしれない。すかさずマイクで停止命令が発せられたの
である。しかしJとて、ここでやすやすと捕まる訳にはいかないのだ。 あれからだったのかもしれないな、Jの運命が傾きはじめたのは・・・・。
河原をも一帯に含む、広大な牧場を自由に走り回る馬達を遠目に、Jは私にぼそりと言っ
た。
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