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第30話  はるか沖地震

 
   
ここ数年間に起きている天災には目をみはるものが多い。
台風しかり、最近ではその暴力的な風力に伴う圧倒的な威力が、想像を遥かに超えた災害 をもたらし、広範囲に及ぶ被災地において多数の犠牲者を出し続けている。
地震なども次々とマグニチュードの数値を跳ね上げ、新潟を中心に起きた新潟県中越地震 などは震度7とも言われており、いまだかつて体験した事もない程の激震に莫大な造作被 害と人為的被害をもたらした激甚災害であった。
ゆうたくんの救出に関して言えば奇跡と言うしかなかった。世界に目を向けてみても同様 で天災と呼ばれるものの大半の現象は、以前に起きているものに比べ格段の差を付けて増 大し続けている様に思う。
人類による自然破壊や、度重なる天変地異で地球の末期が近付きつつあるのだろうか?

私達も数年前になるが、はるか沖地震と呼ばれる大きな地震を体験した事があった。
それは12月の慌ただしい暮れの頃だった。
この地震も震度6程にも達し、ここ南部地方に多くの被害をもたらした。
ビルや家屋の倒壊、停電、断水などをかわきりに、貴い人命をも奪って行ったのだ。当然 私達の店も酷いものだった。
店の玄関ドアは表の道路側へと倒れ、窓ガラスなどは無残にも粉々状態であった。
さらに店内は足の踏み場も無い程にメチャメチャに崩壊散乱しており、既に手の付け様が 無かった。
私は倒れていた玄関ドアを立て起こし、応急処置としてドアを基の位置に釘付けしただけ で、料理店(HGC)の方も気になっていたので、その後直ぐにそっちへと向かったのだ った。

料理店はまるで戦場の様相を呈していた。
皿などの食器やグラスそして酒瓶などが床に散乱し、厨房では熱したオーブンの上部に揺 れによって油が溢れ、それが燃え出し黒煙を発している状態で、その周辺はまるで火事の 焼け跡の様でもあった。
他に目を向けてみると、熱帯魚を飼っていた大きな水槽なども見るも無惨に砕け散り、可 愛がっていた魚達もすでに皆息絶えている始末だ。
この混乱の最中、料理店のスタッフ達は手際よくお客様を安全な外へと誘導しており、そ こにはK(一号)の姿も見てとれた。
すると、突然この場面で大きな余震が起きたのだ。
震度は4程あっただろう。
その影響でさらに慌てだしたお客様に向かってKは両手を広げ
「皆さん慌てないで下さい。大丈夫です。このビルは崩れません。順番に外へ出ましょう !」と叫んでいた。
普段は見せない男らしい誘導である。
そのKが叫び終えた瞬間であったろうか、丁度Kの頭上に設置してあった棚から5センチ 足らずの小振りで可愛い木彫りのキリンの置物が、Kの頭部目掛けて(ポコッ)と落下し たのだ。すると、お客様が逃げまどう中Kは頭を両手で抱え込むようにして床へとしゃが み込んでしまったのである。
その顔は苦悶の表情で歪んでいた。
Kは予期せぬ出来事にびっくりしたのだ。

この状況下、自分の頭に何か得体の知れない物が落下しパニックに落ち入ってしまったの だろう。
だが、直ぐに(ん、なんともない?か!)と気を取り直し立ち上がると、また何事も無か ったかの様に誘導を続け出したのだった

私にとってはその数秒間がまるでスローモーションの様な映像で今でも脳裏に蘇る。
不謹慎ではあるがとても可笑しかったのだ。

黒煙モクモクの慌ただしい雰囲気の中で、小さな笑顔のキリンがKを目掛けてささやかに ライダーキックをしたのである。
まるで相反する二人の、ギャグのコラボレーションであった。
その後、地震の揺れとお客様の誘導も一段落し、私達は何をするでもなくその場に座り込 んでいた。
何をどうしたら良いのか解らないのである。

ひとまずこの場から移動し、私は停電により暗黒の世界と化した市内の表通りを見る為に 外に出てみる事にした。
すると、師走の賑わいで溢れかえっていた人々そのままの大勢の人々が、真っ暗な街並み の真っ暗な道路を各方面に向けてぞろぞろと歩いていたのだ。
とてもこの世の物とは思えない程のおぞましい衝撃的な光景であった。
まるで映画のゾンビの世界観にも通じるような、暗闇の中に蠢く大勢の黒い影だけの民族 大移動の姿が見えていたのだ。黒い甲虫の一団の様でもあった。

私達は夜を徹して復旧作業に取り組んだ。
スタッフにはそれぞれの自宅の状況を把握してもらう為に一旦帰宅してもらい、それから また集まってもらった。
その甲斐あって翌日にはなんとか営業を再開する目処も立ったのだった。
しかし、丁度そのはるか沖地震の数週間後であった。
私はテレビを見てすっかり驚いてしまった。

神戸の街がビルの崩壊と共に激しく炎上していたのだ。
現実の光景だとはとても素直に受け取る事は出来無かった。

それは阪神淡路大震災であった

いつ、どこで起こってもおかしくはない天災に対して人間は無力に等しい。
完璧に防御しているつもりでも、いざそれが起こるとひとたまりもない。
だが、人間は再構築し続ける力はもっている。これから先にもどんな酷い事態が訪れるや もしれないが、未来永劫人類は天災と戦い続けて行くしかないのだ。
過酷な試練だと思った。
そして、幸いな事にキリンの攻撃を受けたKの頭部には、なんの損傷も残らなかった。

が、あの光景は地獄の中での一服の清涼剤の様な感覚で今でも私の心の中に残っている。

 
   
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