厳しい冬ももうすぐ終わるのだ、と、ぽかぽか先がみえる2月から3月あたり、ましてや1月末には会社の1年の節目である決算を終えてほっとひと息、大きく気が緩む時期でもある。この時期が私にとって鬼門である。必ずと言っていいほど厄介な風邪をひく。 気が張っている時はすべてのウイルスを力づくで抑え込んでいたはずの免疫抗体勢力も、この気が緩むという事により、いとも簡単に風邪を発症させてしまうほどにポンコツ化してしまう。 昨日まではまったく普通だったのに突然今日はなんだか軽い寒気が・・・なんて思っているとみるみる鼻が詰まり全身倦怠に覆われ頭がぼ~っとして視野が遠くなってくる。熱はあまり上がる体質ではないのでそれ程それに対しては心配ないのであるが、厄介なのは咳だ。幼いころから気管支が弱かったのだろう、咳が出だすと止まらなくなる。ちなみに喘息はないはずだ。 もう一つ厄介なのが、その風邪が完治するまでの時間の長さが随分と長くなってしまった事だ。若いころの倍以上はかかるようになった。大きな要因がその止まらない咳である。 倦怠感などある程度の風邪の症状は2~3日で収まるのだが咳だけがちゃっかりと残ってしまって治まらない。肺に痛みはない。喉から鳩尾までの気管のあたりがヒリヒリザワザワと疼いてそのせいで咳が継続的に出て止まらなくなる。夜だってうとうとしたあたりに決まってゴホンッゴホンッと嫌がらせのように姿を現し、寝てるのか寝てないのか曖昧な睡眠状態が続くのでたまったものではない。完治には最低でも10日間程度は必要となってしまっている。 この先、やはり時折風邪をひいてしまうのは仕方がない事であるのは百も承知しているが、その完治にはますます時間がかかっていくことになるだろう。短くなることは絶望的だ。 そこで考えてみた。 大変そうでもやりたい事は、いつでもできる事よりもやはり先に延ばさずに体力のあるうちに実行する方がいいのでは、と言う事に至ったのである。 私は前々より「マッターホルン」に登ってみたいと思っていた。 とてもすぐに口にできる程に簡単なことではないことぐらいは重々承知していた。ただこれから10年先に、などとはあの垂直にそびえ立つ山の形を考えれば体力的には難しくなってくるだろう。いいとこここ数年内(もちろん懐具合にも問題はあるが)が限界期限か。 そこで今年、ひとつの試みをやってみることにした。 それは今夏、「剣岳」に挑戦することだ。東北の山はある程度登ってきた経験はあるが3000m級は未だかつてない。そして剣岳のあの天に向かって鋭く聳え立つ先に存在する頂上に到達したときに、「マッターホルン」の映像が脳裏を過ったらそれは本物ではないか。 その時に真剣に検討してみなくてはいけない。 そして今年もやはり、うかつにもポンコツ的風邪をひいてしまった。 そしてまた毎度のごとくの咳だけがちゃっかりと残って私を苦しめている。憎いやつだ。 毎度毎度しばらくじっと堪えて付き合わなければならない、なぜなら連綿処方され続けてきた「咳止め薬」と言われるものを飲んでも、かつてただのいち度も効いたためしがない。飲んでも飲まなくてもなんら病状にかかわりを感じたことがない。 この苦しい咳をピタリと止める魔法の薬はないのだろうか、と、夜布団をかぶると切に願ってしまう。