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第166話  ひとつ上げる

  「走り込みが足りないんだよ」
昨年の「アップルマラソン」、30キロ地点で突然とつってしまった足を引きずりながら前へ前へと進んでいた時、同じく足を引きずりながらも私を追い抜いていった同年代の、言わばおっさんがおっさんに掛けられた言葉だった。
その時、「お宅も・・?」と声を掛けたら「その通り」と額の汗をぬぐいながらにやりと笑った顔を思い出す。
今年の「ウミネコマラソン」にあとひと月と迫っていた4月中旬になってその時の苦い想いを思い出していた。ウミネコはハーフだが、また途中で足がつってしまうようなアクシデントはもうこりごりだ。いつも通りの練習ではやはり不安は募る。そこで私は、昨年購入しても使用してはいなかった「アップルウォッチ」を使ってみることにした。
まだまだ冷え込む早朝の海岸ライン。
私はナイキアプリをダウンロードしておいたその「アップルウォッチ」を右腕に装着し、スタートキーをワンタッチして走った。
「ワークアウトを開始しています」
3・2・1.のあとにその腕時計は言葉を発した。
それはまるで子供の頃に漫画で見た未来の出来事のような憧れ。今がまさにその未来図そのもの。そしてそれは1㎞ごとに時間、距離、そして1㎞でのタイムを発する。今までの練習で走っているいつものスピードでのタイムは1㎞6分であった。そんなものか、と落胆する。ここで1㎞5分くらいにまで上げなくては到底前年のタイム短縮できないことは明白だ。
私はその時計の発する、憧れながらも冷淡なささやきを肝に銘じ、歯を食いしばりながら時間の短縮に注力した。かつての練習では走ったことのないスピード感だ
やはりきつい。
いままで、まぁまぁのスピードで練習していたと思っていたのは錯覚、大きな間違いであった。ゴールしたとたん吐き気がこみ上げる。今までなかったことだ、不思議とくしゃみも連発で出る。
「走り込みが足りないんだよ」同年代の彼の厳しい言葉が再び蘇えった。
確かにそうなんだと思った。あの時私の前を悠々と走っていたたくさんのランナーの皆さんは最低これくらいのスピードで練習していたのだろうと実感した。
それからも時計の発するタイムを気にしながら懸命に走った。
「ウミネコマラソン大会」前日の夕方。
机の上の私の携帯電話が鳴った。ディスプレイ表示のそれはHからのものだった。
「もしもし、へっへっへっ俺、優勝しちゃった」
そうだった、この日は石川県の千里浜で開催されているビンテージバイクレース(サンドフラッツ)初日だった。ここにHはエントリーしていた。そして全国からのツワモノを押しのけ優勝の栄冠を手にしたのであった。すばらしい。大したものだ。ブラボー!
前後リジット、ブレーキ無し、狂っているがその走りは本物だ。
それにしても「へっへっへっ優勝しちゃった」の一言。
軽すぎる。あまりにも軽すぎる。
いや、これでいいのだ、物事そんなに重く考えてはいけないのだ。奴の、真剣だけども肩の力の抜けたスタンス、これは見習わなくてはならないのだ。 翌日、私は肩の力を抜いてレースを走った。走り切ることが出来た。5分の短縮。
足のつりもなくこわばりもなく吐き気もない。なんたっておっさん、レベル的には低いもののその底辺からはひとつ上がれた気がした。このままこの練習を続けることが出来れば次回は、もしかすればもう少しだけ、もうちょっとだけタイムを短縮、あの目標タイムをクリアー出来る時が来るかもしれない。

 
   
   
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