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第165話  驚愕とする

  小さな中古の家を買ったのは1990年、猛暑と言っていい異常気象の続くとても暑い夏の頃だった(観測史上6位だった)。ダイと名付けた愛犬のため、その数年前に借りた家だった。大家は神奈川県に住んでいたのだが高齢のため、そろそろこの家の管理が出来ないとの理由で手放したいとの意向を地元の不動産屋を介して耳にした。不動産屋の掲示した金額を返済年数で計算すると、現在借りて支払っている家賃分をそのまま返済に充てる形で進行できるとの事。それは悪くはないとの結論に達し、その不動産屋の言うがままの値段で買い取ったという経緯があった。
感覚はなかったが、時代はまだまだバブルを引きずっていた時代でここ八戸でも土地はそれなりの値段がしていたようだ。当時のテレビで時折耳にする各地土地の値段などはとても破格で現実味に欠けるほど高額すぎて、それらに比べると、その不動産屋の掲げた金額を無謀なものとは思う余地もなかった。
あれから27年が経った。
家はそれなりに使い込まれて、それと同時に家族も倍に増えて、その小さな家は必然的に手狭となってしまっていた。とうとう建て替えの時期が迫ってきたようだ。 しかし元々狭い土地に建った小さな家、建て替えとなったところでたかが知れている。倍となった家族それぞれのスペースを賄えるだけの家を建て直すにはどうやらここでは狭そうだ。結果、もう少し広めの土地を有するところを探すこととなったのである。
そこで気になるのが、現在ここの土地はいったいどれくらいの値段がついていて、いったいいくらぐらいなら買い手がついてくれるのだろうか、という事。  

 「昔はそんな高額な値段がついていたんですね、今では考えられない値段ですよね。」
 不動産屋の若手スタッフのS氏は、私の発したまるで経験のないだろう未知の数字を耳にして半分笑いながらそう答えた。
 「今なら、繁華街でもそんなにはしない値段で購入することが出来ますよ」
 付け加えてS氏は言った。
 「それではいったい今の相場値段んてどれくらいなのですか」
 私は恐る恐る聞いてみた。
 S氏はおもむろにその地区の大きな地図をテーブルに広げると、私の家のあるあたりに存在していた売地のサインの入った所を指さした。
 「そうですね、ここが先日売れたのですが一坪○○円と言ったところでしょうか」
 私はS氏の口から飛び出したその値段を聞いて愕然とした。
 にわかには信じられないその値段に言葉をなくした。血の気が引いた。
 「まさか・・・・そんなものなのですか」
 「ええ、これでもいいほうです、この奥の方の土地では○○円で、2年経ってやっと売れたんですよ」
 時代は流れ、そして時代は進化を伴うばかりではないようだ。選ばれたジャンルは勢いよく上昇を見せているが取り残され歪んだ部分は負の産物として価値を失う。

 どうやらこの土地はその負のジャンルに組み込まれてしまっているようだ。

「その値段では、多分売れませんよ」
私の提示した値段を見てS氏は即答した。
「そうですか、ただ公園も近いし角地だしこれくらいは欲しいところですね」
先ほど相場を聞いてしまっていた私は、断腸の思いで、買った時の半分の値段を提示したのだが、それにも関わらず無理と言われてしまった。だが、少しばかりの希望を胸にその値段を誇示したかった。
「一度その値段で売りに出してみてもらえませんか」
「ええ、解りました、相場からいってもなかなか厳しいとは思いますが、やってみますね」
売り主の意見として取りあえず尊重しようとS氏は聞き入れてくれた。

半年、何の音さたもなく時間は悠々と過ぎた。
やはり、S氏の言うようにそれは全く動く気配は見えなかった。
根っからの雨男の私には、時代の雨もまた降り注ぐ。
慣れっこだが、やはり厳しさは感じる。
協議の結果、約6割ダウンの値段での提示が妥当とみなされそれに追従することになった。
その値段にしたあたりから、ポツリポツリと問い合わせがあると言う。
愕然とした一時的ショックはあったものの今では潔く「時代なんだ」と受け止めている。
時代の流れや休日の雨にも、ましてや迫りくる年波にも負けない柔軟な心を持ちたいものだ。

 
   
   
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