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第145話  山に向かう

  山に登り始めて10年になる。
最初に登ったのは近場の「階上岳」、標高700メートル程のいわば手ごろな高さの山である。日常に潜むちょっとした迷路に戸惑い、車でたまたま通りかかったその山を見て、ひとりふらり登ってみようと思いたったのが最初、登山の服装とは程遠いジーンズにロングスリーブシャツ、そして足元はローテクなスニーカー。
もはや安易としか言えないそんな格好で、ひっそりと隠れるように存在する茂みに覆われたうす暗い山道へと踏み入る、と、その沈静なる非日常的空気感に不思議と気分が落ち着いた。「なんだ、この安らぎに満ちた空間は」などと言うのではない。肩の荷をそろり下ろしたようなホッとしたゆるい感覚。
そのまま、私はその平たんとは言えない複雑な山道をザクザクと進んだ。
すぐさま玉のような汗が全身の汗腺を押し広げるような勢いで流れ出す。まるで長い時を経て内面に蓄積された黒い水が絞り出されるようだ。
山道はどんどんと鋭角にきつくなり足腰の筋肉が悲鳴を上げだす。それでも私は前へ前へと上へ上へと突き進んだ。
疲労はピークを迎え、その状態でも構わず突き進んでいるとやがて体がその限界状態に慣れてくる。人の姿も影も無い孤独のなかで、無心に近い感覚に陥る。
まるで疲労度と比例するように、精神の浄化解放そして安定が訪れた。体内麻薬の噴出?
私はわき目も振らず一心不乱に山頂を目指し、そして山頂に辿り着いたところで雑踏に満ちているにも関わらず美しく見えている下界を一瞥、そしてすぐに下山した。どれくらいの時間を要したのかは皆目解からない。すっきりとしたやり遂げ感だけが心を満たす。
汗にまみれた体を洗うのに銭湯へと向かい、そしてさっぱりとするとなんだか嬉しくなった。それからだ、あちらこちらの、日帰りできる範囲内の山を登るようになったのは。
八甲田大岳、岩木山そして岩手山、それぞれに個性的な山がここにはある。
時として心は迷路をさまようが、山道には標識があるので大丈夫。
晴天の休日、時に騒がしい街を後にしてひと汗かいてみるのも一考、なかなかいいものだ。
ただし、熊対策は万全に。

 
   
   
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