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第143話  葛藤

  「シャワーぬるいしぜんぜん水圧ないよ、どっか悪いんじゃないの?」
仕事の関係で来八、昨夜から家に滞在しているHが、翌朝シャワーを使って浴室からでてくるなりそう言った。
言われてみれば確かにそうだ、と思った。
前々からそんな感じはしていた、いっきに悪化したわけではない、長い年月を重ねて万物は劣化し、そして朽ちていくものだ。
「ボイラーかな?もうかれこれ10年以上は使ってるから、そろそろ変え時かな」
出張時、私は早朝にシャワーを使うのだが、以前はそれ程気にならなかった寒気、近頃冬季の冷え込んだ早朝のシャワーがつらいと感じていた。水圧がめっきりと弱くなり水温も高レベルに調整するのだが思う様には上がらない、寒くて寒くて、まるで修行のような環境だ。
Hのその言葉を機に、私は思い切ってボイラーの交換を決断した。
かくして、我が家に久方ぶりの真新しいボイラーが設置された。
デジタル表示のそれは、勢いよく燃える炎の轟音を響かす。
確かに以前よりは幾分温水に勢いがあるような感じだが、画期的変化は見られてはいないような、それでも家庭用のボイラーだからこんなものか、そう思った私は、満足とまではいかないまでもそれなりに使っていた。
それから数カ月が経ったある日、またまた水温が混合栓の設定温度よりも低くなったような、高温域まで設定を変えてみても変化なし、まさかこの新しいボイラーがまた故障したのかな?そう思った私はすぐにそのボイラーを設置してくれた業者へと連絡を取った。
翌日、早々に担当が我が家へと足を運んでくれた。
「どうです、いつもはこんなもんじゃないのですか?」
担当はシャワーヘッドから流れ出る温水を私の方へと向けて確認を仰ぐ。私はその温水に手をかざしてみるもやはりやや温水の温度の低さと相変わらずの水圧の頼りなさが気になった。担当が混合栓の調節つまみを高温域に回してみてもさほどの変化も見られない。
「熱さはどうですか?」
「やはりぬるいみたいですね、これ、この混合栓自体がダメになる事は無いんですか、これも相当古いですからね、ボイラーは新しい訳だからそう故障はないでしょう、今回これを変えてみましょうか?」
私がそう言うと、業者はしばし考えた。
「そうですね、確かこれと同じものが会社にあったはずです、それじゃ明日お持ちします。」

翌日、午前9時、混合栓の取り付けは10分ほどで終了した。
私は大きなミスを犯していた事に今更ながら気が付いた。
シャワーヘッドから吹き出る、今までとは別物と言っていい程に強力な水圧と温水の共演。本来の水圧とはこれほどまでに強力で贅沢で魅力的なものだったのか、そしてその温水の温かさと言ったらまるで天国の領域、至福のあたたかさ、リゾート的感覚。
これだ、悪の根源は、この憎たらしいまでに落ち着きはらった佇まいの混合栓。
ふと、ある考えが頭を過った。
「もしかすれば、ボイラー、変える事は無かったのでは?」
初めから混合栓の故障を疑う事が出来ていれば1万円ちょっとの出費で済んだのでは、いやまてまてそんな事は素人の私が思いつく領域にはない、そうだそれは業者の方から提案すべき事案ではないのか、しかし、直接的にボイラー交換を言いだしたのは私の方ではないか、彼らはだたそれに従い任務遂行しただけだ、攻める訳にはいかない。そのうちやっぱりボイラーだってダメになっていたはずさ、きっとそうさ・・・これで、よかったのさ。
ちいさな日常。

 
   
   
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