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第133話  剣の道と人の道

  剣道との出会いは小学3年の春だった。
放課後のクラブ活動に密かな憧れをもっていたその頃、中学年である3年生に上がったところで剣道部と柔道部のみの部活動が許されていた。
4年生になれば野球だサッカーだ卓球だと、存在するすべての部に参加することが可能だったのだが、とりわけ好きだった野球もなんのその、そのために何もせずに一年を棒に振る事は私には出来なかった。
ふたつにひとつだけだが、考えた末に、剣道部の門をたたくこととなった。
それまではなんの制約もなくさっさと帰宅していたのに、授業が終了した後にやる事が出来た、なんだかひとつ成長できたような気がした。
早速、両親に真新しい竹刀を買ってもらった。
自分だけの竹刀を手に取る、小学校の入学前にランドセルやノートなどの文房具を買いそろえてもらった時の高揚的感慨にふける。そう、私は新しいドアを自分の手で開けたのだ。
初めての体験、それは少しの戸惑いと期待であり、また体があらゆることに順応出来るに至るまでは大変なものだ。しかし、面白い、私は楽しみながら練習に励む事が出来ていた。なぜなら、講師が良かった。教員ではなく校外ボランティアの方で、剣道を教えてくれるためだけに放課後来てくれる老剣士、時には厳しく時には優しくしっかりと向き合って指導してくれた。小学生の私から見たらすでに「お爺さん」と言っても過言ではなかったが、その立居振舞は実に精悍なものに映った。とりわけ、竹刀をかまえ、さりげなく振り上げ振りおろすその姿には美しささえ感じたものだ。
その講師のおかげでくじけずに剣道を続けられた。

楕円に凝縮された網目からの視界は、まるで監獄の小さな窓(そんな感じ)から世間を覗きこむような閉塞感と孤独を感じさせた。熱気と汗にまみれたその小さな空間には荒々しい呼吸音だけが心底響く。すでにたっぷりの疲労で腫れあがったその竹刀を握りしめた腕を、気力を持って引き上げ、すかさず気合とともに振りおろす。幼いころに学んだあの老剣士の華麗な所作がよぎる・・・。
年数もたつと試合で勝ための剣道が必要となる。間合いと呼吸、そして駆け引き、どれが欠けてもいけない、しっかりと相手の動きを見切るのだ。ここぞと感じる一瞬で勝負が決まる。強さは美しさだ。
腫れあがった肘、みみずばれの脇下、とにかく痛すぎる想い出も数々蘇る。

続けていた剣道は高校で止めた。
それは、私自身が大きく道をそれてしまっていたからだ。修正には長い年月が必要になる。今更ながら思えば簡単なことに感じるのだが、やはり当時のかたくなな思考ではそうはいかない。人に頼ると言うわけではないが、「いい出会い」それは大きな希望の灯だ。
老剣士のあの美しい剣道はいまでもしっかりと心に残っている。

 
   
   
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